「この人はこんな趣味があったのか」「あの人は、こんな考えだったのか」—SNSが発達したことで、繋がりのある人の生活を見る機会が増えました。タイムラインに流れてくる他人の人生は、個人的にとても有意義なものです。
ただ、タイムラインから流れてくる「他人の人生」は「私たちに見せる」ことを前提としています。タイムラインから見える他人の人生は、本当の人生だけど、本当の人生ではないかもしれません。
今回、取材したのは他人に見せるつもりのない「自分」を、見ることが出来る空間。東京都渋谷区、小田急線の参宮橋駅近くにあるギャラリー「Picaresque(ピカレスク)」内にある「手帳類図書室」です。
ここに行くと、他人に見られることを想定してない「手帳」「日記」「メモ帳」「ネタ帳」といった「手帳類」の中身を見ることができます。2014年から「手帳類」の収集を始めた志良堂正史(しらどう・まさふみ)さんのコレクション1300冊以上の中から、約300冊を読むことが可能です。
例えば、女子高校生が先生に片思いしている淡い想いを綴った文章、社会人への階段を上っている女子大学生の記録、小学校の連絡帳に書かれた母親の思いなど、その記録は様々です。
ただ手帳類図書室を紹介するのでは普通のメディアと相違がないので、今回は志良堂さんが最初に譲り受けた「手帳類」の中身を紹介しながら、中身を見て木村が一言ずつ「ツッコミ」ながら触れていきたいと思います。
ピカレスクの店長・松岡詩美さんによると、Twitterで手帳類図書室が拡散されている影響からか、10代から20代の若い人たちが多く訪れています。また、ラジオ番組で紹介された後は、比較的年配の人も訪れるそうです。
数年前にテレビで知ったという地方の人が、東京に訪れた際、わざわざギャラリーを訪れてくれたこともあるそうです。それだけ、この図書室のインパクトが強かったということでしょう。
なぜこうした手帳類の収集を始めたのか、志良堂さんに聞きました。
Q手帳を集め始めたキッカケは
本業のゲーム制作が忙しくて、まとまった時間を必要とする個人的なゲーム制作ができないストレスがありました。そのときに少ない時間で可能な自分らしい活動はなにかと探していたときに、他人の思考をコレクションすることは面白そうだと考えました。
もともとは集めたものを自分で読み、ゲーム制作に活かそうと考えていました。しかし、手に入れた手帳を読んでみると僕以外の人が読んでも面白いに違いないと考え、共有する方法を模索し、展示という形を試していきました。
Q今までで一番特徴的だった手帳は?
個々の手帳の特徴というよりは、コレクション全体の特徴として考えています。例えば赤裸々な恋愛の記録があったとして、これまでコレクションになかった場合は特徴的な一冊となります。
ただし、その後、同じ性質をもった記録が集まった場合に、特徴的という観点では薄くなっていくと考えます。
初めて手帳類図書室を訪れた方にとっての特徴的な手帳という点では、予備校の先生に恋をした女子高校生のノートや、デリヘル嬢の手帳がおすすめです。
その他、さまざまな言葉やフォーマットで書かれた詩人の手帳や、緑一色で延々と書かれた男子学生の片思いの日記などもおすすめです。
Q所蔵の中で最も古い年代ものと思われる手帳は?
戦後すぐの日記などもありますが、基本的には1990年代〜現在のものがほとんどです。平成のコレクションとも言えて、それが手帳類プロジェクトの特徴だと思っています。
平成はもうすぐ終わってしまいますが、今後とも、いまを生きている人々の私的かつ日常的実践の記録を集めていきたいです。
手帳類図書室では、医者や弁護士、政治家といった「お堅い」職業の手帳を求めているそうです。「提供してもいいよ」という方、よろしくお願いします。
※手帳類図書室
151-0053東京都渋谷区代々木4-54-7
ギャラリー「Picaresque(ピカレスク)」内
毎週土日祝 11:00〜18:00(時期により営業日時は変動)
利用料金 1時間1000円(2019年11月1日より)
手帳類図書室 公式ホームページ https://techorui.jp/
ピカレスク 公式ホームページ https://picaresquejpn.com/