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オンラインサロンは「草野球の練習場」達人語る

野球場

「テレビ朝日がクリエイターを目指すミレニアル世代を対象としたオンラインサロンを開設」というニュースがあった。

オンラインサロンとは「ウェブ上に作られた月額会員制の有料ファンクラブ」とも言うべきもので、ウェブ上でクローズドに展開される。オフ会も開催され、リアルなコミュニティーに発展もしている。ホリエモンこと堀江貴文氏、幻冬舎の箕輪厚介氏など個人が運営しているというイメージがあったが、テレビ局もこの時流に乗った形だ。

テレビ局がオンラインサロンに乗り出すとあっては、取り上げないわけにはいかないということで、今回はオンラインサロンの「達人」である株式会社女子マネの代表取締役・中里桃子氏に話を聞いた。

株式会社女子マネの代表取締役・中里桃子氏

株式会社女子マネは「革命家を下支えする」を理念に、オンラインサロンの運営サポートなどを行っていて、中里氏はこれまでに700人以上にオンラインサロンの作り方のレクチャー、30社ほどをサポートしている。2018年7月には『副業・人脈・好きなこと 人生が変わる「オンラインサロン」超活用』も上梓している。

私は2017年、あるオンラインサロンに参加したことがある。サロンの運営者が開く定期的なクローズドなサロンイベントに通い、運営者と交流したかったからだ。しかし、参加していくうちに、なかなかその思いが叶わず、4か月ほどで退会した。月額5000円だったこともあり、割に合わないと判断したからだ。

オンラインサロンは「草野球の練習場」

中里氏に、この話をしたところ、こんなことを語ってくれた。

「木村さんは、オンラインサロンについて、勘違いをしていたんだと思います。オンラインサロンは何かを期待して参加するものではなく、自らが考え、率先して活動する場なんです。いわば草野球の練習場のようなものです」

確かに私は、オンラインサロンに「ある種のサービス」を期待していた。振り返ってみると、そのサロンではメンバーたちが商品開発をしたり、サロン内コミュニティーを作り、活発に活動していた。

当時の私は、そこまで活発的な人間ではなかったので「なんでこの人たちは、こんなに活発に活動しているのだろう」と思ったほどだ。振り返ると、そういうことだったのかと合点がいく。

オンラインサロンで「役割の試着」を

中里氏が続ける。

「オンラインサロンの参加者の多くは会社員ですが、サロンに参加すると、家庭や職場とは別の新しい人間関係を得ることができます。そして、会社や家庭以外の新しい自分の役割やキャラクターを『試着』することができます」

「仕事にイライラする原因の一つにあるのは“自分に合ってない”“一番いいところを生かしていない”という点。オンラインサロンというリスクのない場所なら「試着したキャラ」で自分の意見がきちんと言えるし、失敗も出来ます」

「オンラインサロンでの関わりや立ち位置を実験し、生かすべき場所を焦らずに見つけることができるんです。月額数千円で新しい人間関係や自分を変える機会を得られるなら、それは非常に有益な投資です」

考え方によっては、オンラインサロンは自分を変える有効なツールとなりそうだ。しかし、それでもサロンになじめない時は、どうすればいいのだろう。

「『置かれた場所で咲きなさい』という本がありますが、『置かれた場所で咲けなければ、自ら鉢を植え替えればいい』だけです。一つの成功体験があると、その体験にのりがちですが、一般人の成功は限られた方向だけではないです」

「オンラインサロンを通じた活動は、仕事などにも良い面で返ってきます。例えば、サロンを通じて学んだ『人を巻き込む技術』は、会社などサロン以外の場でも役立ちます」

「有料メルマガ」「マッチング」「中小企業」

じわりと広がっているオンラインサロンだが、一方でサロンを開こうという人も増えているのではないだろうか。

「オンラインサロンは『有料メルマガ』『マッチング』『中小企業』という3つの役割を果たしています。本を出してから私のところに問い合わせが多くなっていますが、自分自身の強みや売りがない人は難しいです。

「あと、サロンはコンテンツから作るのではなく「目的」を掲げることも大事。ラクして儲けようというアフリエイト感覚だと、オンラインサロンの運営は厳しいです」

付き合う人は「月額数千円で変えられる」

元マッキンゼーの大前研一氏は「自分を変える3つの方法」として「時間配分を変える」「住む場所を変える」「付き合う人を変える」と述べている。私自身、オンラインサロンを通じて付き合う人は変わらなかったが、ここ1年で仕事を通じて付き合う人が変わったし、増えたし、そのおかげで行動力や瞬発力が上がった。

東京で仕事して、さらに放送作家という仕事をしているから可能なことだったが、中里氏は「地方にいても、付き合う人を変えるキッカケはオンラインサロンで得られる」と語る。

「オンラインサロンは、どこに住んでいても、安価に手早く「環境」を変えられます。転職や引っ越しは簡単にできませんが、オンラインサロンなら月額数千円程度で自分の付き合う人を変えることが出来ます」

中里氏は自身の会社の理念について、こう語っている。

「オンラインサロンを通じて、新しい自分を、自分の本来の持ち場に生かしてゆく方法を日本に広めることで、愛情表現をするように楽しく働く人で日本をいっぱいにしたいです」

放送作家としては、テレ朝のオンラインサロンに注目していこうと思うが、期間限定なのが気になる…。